作文は、書き方のコツさえ掴めばとても楽しい作業だと思うのですが、小学生の子どもにとってその「コツ」が何であるか、なかなかわからないのかもしれませんね。
我が家の子どもたちも、最初は「作文」という言葉に拒否反応を示してしまうくらい苦手に思っていました。彼らに作文指導を行って丸3年。今では「難しい」とは思っても、「嫌い」とは思っていないようで、むしろ、ワクワクしながらネタ探しをしているようです。
3人の子どもが3年間で入選した作文コンクールの数は、1年目は2つ、2年目は4つ、3年目は7つ。創作童話、読書感想文、体験談、エッセイ。楽しみながら確実に腕をあげていきました。
私が彼らに指導した作文の書き方の「コツ」は、基本的にはたった一つです。スキルやテクニックなどではありません。その一つのコツを掴むだけで、生き生きとした文章になります。しかも、この「コツ」を掴めば、もう「作文嫌い」とは言わなくなるでしょう!
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「作文」は出来事の説明ではない
「作文が苦手だ」というお子さんは、たいてい何を書けばいいかわからないということが多いようです。我が家の子どもたちも、最初は作文用紙を前にうんうん唸っていました。
例えば学校で、先生に「日曜日に何をしたか1分間程度で発表しなさい」と言われたとします。するとたいていの子どもは
—–私は、日曜日、電車に乗って、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと海に行きました。海に着いたら、たくさんの人がいました。お母さんはビーチにシートを敷いて、パラソルの下で本を読んでいました。私とお父さんとお兄ちゃんは海で泳ぎました。水が冷たくて気持ちよかったです。また行きたいです。—–
という感じでまとめるのではないでしょうか。
順序立てて書かれ、簡潔でいいですね。日曜日にどのように過ごしたか、よくわかる文章です。日記にもこのように書かれることが多いでしょう。
ところが、これと同じように作文を書くとどうなるでしょうか?当然ながら400字詰め原稿用紙の半分を過ぎるのがやっと、ということになってしまいます。これでは「作文」にはならないのです。
大切なのは「心の動き」
我が家の長男も、最初の頃は、時間軸に沿って順序立てて書いてばかりいました。「きっちりと書いているけど、面白くない」という私の指摘に、さんざん頭を悩ませ、「できない」と半べそ状態になっていました。彼は私の言う「コツ」が理解できないでいたのです。
ところが、ある日、彼にその「コツ」が掴める出来事がありました。それは、学校でスキー実習に行った時のことです。先生経由で送られてきた長男のメールには次のように書かれてありました。
―最高だよ!
今日は9時から5時までスキーをしたよ!
中級コース以上のところぐらいまでいったよ!
ここはすごくきれいなところだよ!ホテルの横には大きい池があって、
その向こうには大きい山が連なっているよ!
!ばっかり書いたけど、本当に!なんだ!
ぼくの写真楽しみにしててね!
日記もつけてるからね!
じゃあね!―
この短いメールは、今までの彼の書いたものの中では傑作の文章でした。読んでいる私の胸がはずみ、状況が浮かび、もっと知りたい、そういう思いが駆り立てられるものでした。
作文の書き方のコツ、それは「心」を伝えることです。人の心はあらゆる外部からの刺激によって大きく変動します。ところが、その変化は他人の目にははっきりと見えません。その他人には見えない心の動きを、文にして伝えることで、読む人の心を動かすことができるのです。
作文は、出来事を順序立てて説明するのではなく、他人には見えない「心の動き」を、動かされた出来事を取り上げ、動かされた理由や経緯などを加えながら読む人に伝えていくものだと、私は思っています。
題材(テーマ)を見つける
以上のことから、作文の題材の選び方は、「面白かった出来事」ではなく、「心が大きく動いたこと」となります。一見同じように思えますが、この二つには大きな違いが生まれます。
「面白かった出来事」に着目すると、最初に紹介した出来事の紹介文のように時間軸に沿った書き方になるでしょう。一方、「心が大きく動いたこと」に着目すると、心の浮き沈みが軸となり、出来事がその心の変化を伝えるための手段となります。
出来事がメインになるのではなく、心の動きがメインであることをしっかり理解して作文を書くことで、書くことが何倍も楽しくなり、生き生きとした文章になるのです。
伝え方(構成)を考える
作文に適切な題材さえ見つかれば、後は驚くほどペンはすいすい進みます。なぜなら、選んだテーマは、他の誰でもない、自分の心の中、つまり自分だけにしかわからないものなので、伝えるためにはたくさんの説明が必要となるからです。
元来子どもはおしゃべりで、心を動かすほどの興奮した出来事は、誰かに聞いてもらいたいという衝動に駆られます。その時、より分かりやすく伝えようと、無意識のうちに頭の中で構成を作り上げているものです。
作文はこの作業をより冷静に、紙に書き出していくことになります。心の動きに着目すると、当然、「最初の心の状態」、「大きく動かすことになった出来事」、「どのように変わったか」など、体験や知識をもとに説明していくことになるでしょう。自分の心の中を見つめていくことなので、いたって簡単な作業となります。
上で紹介した長男のメールは、作文ではなく、思うままに綴られたむき出しの心です。そのむき出しの熱い心をより詳しく伝えるために構成を考えて整えたものが作文となります。
作文は子どもを成長させます
作文を書くことって、実はとっても面白いことなのです。テーマに沿って心の動きを追いかけていくと、「なるほど~」と思うことにもたくさん出会います。自分のことなのに気付かないでいたことって、たくさんあるのですよね。
作文を書くことによって、自己を分析することができます。子どもながらに、自分の成長にも気付くことでしょう。それが大きな自信へとつながります。
「出来事」ではなく「心の動き」に着目する。それが作文を書くコツです。さっそく試してみてください。